入院生活101日目、ステロイド療法31日目(離脱期3日目)、俺の歩行の右傾癖の件。181122

昨日のエントリの最後に書いたように、一日の総歩数が八千歩を超えた。CIDPを発症してから初めての達成なので、正直に嬉しかった。無理しすぎたかなと、今日の朝の体調が少し心配だったのだけど全く問題なし。4日前から続けている、毎朝起き抜けにする6分間歩行のリハビリ(病棟内を7周するので略称「セブン」)も歩数、時間ともに平常通りだったので疲れは残っていないと判断した。
リハビリをご担当頂いている先生の中では一番の上席である理学療法W先生に、昨日のうちに相談をしておいたのだが、体調不良が見られない限り運動量をセーブする必要はないとのこと。安心して今日もついさっきで八千歩超えまで活動した。
療養開始から現在の離脱期まで、ステロイド投与は俺にとって、目覚ましい身体機能の改善をはじめとした恩恵しかもたらしていない。副作用や不具合が全くないなんてことがあるのかな。その場合はおそらくステロイド依存のような状態になって、先々の健康に影響が出そうだ。まぁ、今のところ上手く行っているものを先に心配してもしょうがない。
前置きがまた長くなった。昨日は初八千歩だけでなく、自身の歩行の構造についても大幅に理解の進んだ一日だった。まずはそのお話から。

理学療法YK先生が昨日の施術のときに「支持基底面」の話をしてくださった。(参考) そのおかげで自分の歩行にある問題点についての理解が大分進んだように思う。間違って理解している部分もあるかも知れないがそれも含めて書き残す。支持基底面の説明は参考ページを参照のこと。
施術では毎回さまざまな歩行運動をメニューの一部として行う。大きく脚幅を開いて歩く、ウェイトトレーニングでいうフロントランジのような状態で前に進んでいく運動を行っているとき、俺は手すりの支えがないとどうしても安定せず、足の着地でぐらついてしまう。昨日も手すりに、悔しいのと少しでも手すりの補助を減らしたいのとで、指先だけちょこんと沿えて運動中、俺が「ほんの指先だけなのにこれがないと安定しないのです」と言ったところ、YK先生は「指先だけですけれど壁に固定された手すりで支えているので安定性はごく高いです。この場合、支持基底面の強度は壁全体まで含むからです」とおっしゃった。そして支持基底面の説明をしてくれた。
その後もさまざまな運動メニューを続けながらお話は進む。歩行という運動は、前後に足を置いた状態の安定したある支持基底面から、足を組み換えた、次の安定した支持基底面へ移行していくという運動であること。途中の移行時は片足立ちになるので当然不安定なのだが、俺の場合、左足の移行時(=右足片足立ち時)に右肩を含めて上体が右に傾く癖がある。片足立ちの不安定な状態を補うためと、前々エントリで書いたように右足脹ら脛の筋力が弱いことを補うための代償(参考)とのご指摘で、毎日のリハビリ施術には他にも様々な目的があるが、今はその右傾癖を直す目的でいくつかの運動メニューを行っているとのことだった。
俺はいつもリハビリが終わるとできるだけ時間を空けずに内容をノートに書き残している。開始/終了時間、担当の先生、新しく導入された運動メニューがあればその説明、既存のメニューでご指摘を受けた点、特に病室の空き時間にやる自主リハビリで注意する/意識を集中させるべきポイントなどがあれば詳しく、その他書き置いている。
昨日も支持基底面の話を重点的に様々なことをノートに書き散らしていたのだが、そこで疑問に思ったのが「俺の右傾癖は何の代償なのか」つまり代償されているもとの運動は何なのかということだった。答えはすぐにわかった。「そんなものはない」。今日YK先生に確認したが大筋でこの理解で良いそうだ。
一つの支持基底面から一歩前方の次の支持基底面へ移行している間は片足立ちなのだから不安定なのだが、それを解消するのは本来「安定した次の支持基底面への移行」であって、目指すべきは「スムーズな次への移行」であり、決して「片足立ち状態のままでの安定度の向上」ではないのだ。言い換えれば、自然な歩行運動にはない、本来不在である「片足立ち状態での安定度を向上させる動作」の代償として俺の右傾癖はある。いわば「カラ代償」なのだ。
なぜカラの代償運動が発生するのか。片足立ちの不安定と右脹ら脛の弱さによる不安定が合わさって、不安定度が強くなり勝ちになっていることが原因だ。おそらくそれらを通常あるべきレベル以上に「恐れて」いるため不要な代償運動が発生し、本来の「歩行運動の安定度を維持する」ための動作、スムーズな支持基底面から支持基底面への移行が妨げられているのだ。なぜ「通常以上に」恐れているのか。
それは同じく昨日の午後の理学療法W先生の施術の時間に原因と対処がほぼ見つかった。俺の不具合を診ていただいているのだから当然なのだが、すべてのリハビリは繋がっているのだ。
俺の歩行を矯正するためにしばらく前から「腰の前部分の動作」を正常化させるための運動がいくつか取り入れられた。ものすごく効果があって、これらの運動の後に歩行スピードを測ると、急いで歩いているわけでも無いのに2割ほどスピードが上がる。詳しくは次のエントリで書くが、一つの運動だけ説明する。

爪先片足振り子バランス
用意できるなら平行棒、無ければ手すりを持つ。手すりが身体の横に来るように。手すりには極力依存しないよう動作するので、手すりは左右どちらにあっても良い。どちらかの足を支持足とし、軽く爪先立ちする。用意できるなら5ミリほどの厚さの踏み板を支持足に噛ませる。ポイントは、支持足は振り子の支点となるので曲げたりせずにほぼ直立の状態を維持し、支持足が疲れていたら爪先立ちでなくベタ足てもOK。その場合は踏み板がないと引っ掛かるかも。
支持足でない方の「振り子足」を後ろに引いた状態がスタートポジション。フロントランジではないので大股ではなく、ごく自然な歩行時の歩幅分後ろに引く。
スタートで振り子足を前に振り出し、歩幅分前に着地させる。重要なのは、振り出し時はスローモーションであること。着地後は振り子足を引いてスタートに戻し動作終了。戻すときは通常スピードで。
身体を傾けない、よじらない、振らない。上体は正面を向いたままで、決して開かない。

昨日のリハビリまではこの運動の理解が今一つできなくて、自主トレでもよく意味が分かっていずに繰り返していた。この運動のことを「爪先立ちフロントランジ」と呼んで、支持足の方を曲げて、大きく前に踏み出していた。結果、支持足ばかりが疲れることになって、俺はこの運動を「支持足を鍛える運動」のように思っていた。
それが昨日、W先生が支持足が疲れたらおかしいと、支持足は直立で良いと仰った。大幅に足は開かなくて良い。そして、前方への振り子足の着地は「かかとではなく足指側(足先側)」「小指ではなく親指側(足裏の内側)」との説明があった。
そこで気がついた。これは先ほどノートに書いたばかりの「支持基底面から支持基底面への移行動作」の練習じゃないか。支持足の筋トレなどではない。
また、手すりに依存しないように、可能であれば手を離してとの指摘もあって、この運動の目的のひとつが「支持基底面の間の移行中の不安定な状態に慣れること」なのだと理解した。まさに右傾癖の矯正のための動作だったのだ。
そして以下は仮説でありいつものように俺の素人考えかも知れないのだが、俺の右傾癖の原因、過度に不安定を恐れる理由のヒントが、「振り子足の着地は足先側が正しい」という点にあるのではないかと思った。
俺は扁平足と言うわけではないが、歩行時の足の着地は完全に踵から下ろしてきた。しっかり足を踏みしめる感じが好きで、大理石などの硬い床ではコツコツ強く音がする歩き方をしてきた。歩行時の踵からの着地は決して完全な間違いと言うわけではないが、それも程度問題だ。俺の場合を省みると、重心が後ろに残るほど、イメージとしては反り返り気味に感じるほど踵着地の癖が強かった。
この癖が右傾癖の原因であり、理由ではないかというのが俺の仮説だ。ここまで歩行時に踵重心になる瞬間があると、そのこと自体「スムーズな次の支持基底面への移行」を妨げているし、強く不安定度を感じる原因にもなっているだろう。なぜ右だけ傾くかというと、右脹ら脛の力が劣るため、左との比較でより不安定度を強く感じて右だけカラ代償が発生するのではないかと考えられる。
感覚的にはこの仮説は完全に正解だ。実証としてはこの項の最初の方に書いた、大股歩き「フロントランジ歩行」を自主トレのときに足先着地でやってみたら、安定度が格段にましてほぼ手すり無しで歩けるようになった。また、6分間歩行「セブン」のときにも足先着地と右支持足の蹴りだし=軽い爪先立ちを意識したところ、当然右傾癖はなくなって体感での安定度がまし、何より歩数と掛かる時間のブレが少なくなった。自主トレ直後など息が上がっているときには、歩数と時間がが通常大きく増えるのだが、その幅が少なくなった。右傾などの余計なロスが減り、スムーズに支持基底面が移行できているのだと思う。この仮説が正しいかどうかは、仮説を元に修正した今の俺の歩行フォームが意識せずとも自然にできるように身に付いた頃、理学療法士の先生方からどういったご指摘があるかで判ると思う。身に付くまで今の八千歩ペースだと2~3日掛かるだろう。

今の俺にとっての理想の歩行とは、100歳になっても自力でできる歩行だ。そのためには最低限必要なもの以外の筋力に頼らない、言い換えれば少ない筋力をロス無く使う歩行フォームを獲得しなければならない。その意味で、昨日の支持基底面の考え方と、それに伴い俺の歩行の右傾癖の原因について仮説を建てることができて、直近のリハビリの方針が見えたことは、退院が近付いてきて療法士付きリハビリが受けられる残り時間も限られてきた今、とても意味のあることだ。
エントリが思いの外長くなってここまで書くのに3日掛かった。このように自分が自身の身体のことを理解できた経緯を細かく書き残すのは、CIDP再発時に少しでも回復の助けになればと思うからだ。けれど書くのに時間がかかりすぎて、細かなニュアンスが抜け落ちていくようで焦ってしまう。病室でじっくりエントリを書いて居られるのも残り少なくなってきているし。
次のエントリもすぐ書き始めよう。書くネタにはしばらく困らないから。